「華氏451度」

華氏451度」を読んだ。

もはやSFではなく今の話。

人々に物事を深く考えさせないようにする為に本が禁止された近未来が舞台。瞬間的な娯楽を提供するテレビやラジオを何も考えず楽しみ、友人と中身のない話で騒ぐことが幸せで、あれこれ悩んだり考えることは苦しみだと人々は洗脳されている。

本を焼く仕事をしている主人公は、密告された本の所有者の家からこっそり本を持ち帰り読んでしまう。本の中には何か大切なことがあるのではないかと気付き、妻やその友人に本の内容を読んで聞かせるが、彼女たちは何も感じないどころか怒り出してしまう。

主人公も密告されて追われる身となり、逃亡生活が始まる--。

SF小説として書かれた話だけど、全然SFじゃなく、今の話だと思った。

「本とか読むんだ?w」「ちゃんと本読んでて偉〜いw」とか言ってくるやついっぱいいるもんなぁ。

ブラッドベリは未来を憂いて書いたんだろうけど、残念ながらその通りになっちゃってる。

ちょうど、職場にいる向上心のないお喋りなおばちゃん達にうんざりしてイライラしていたから、このタイミングでこの本に出会えて良かった。バカに何言ったって無駄、怒ったらこっちが損する、大人しくしている方がいい場合もある、でも必ず本や知識や考えることが必要になる時が来る、等々、メッセージを受け取った。

序盤に登場する、主人公に考えるきっかけを与える少女。変人扱いされてるけど、彼女は何か大切なことを知っている様子だった。

私も昔から変わってるとか変ってよく言われてたけど、逆に普通って何?ってずっと思ってた。普通って、みんなと同じってこと?あなたはみんなと同じになりたいの?じゃああなたであることの意味は?みんなと同じならあなたじゃなくてもいいよね?私は代替不可能な唯一無二の私でいたいけど?って。言わないけどずっと思ってた。

少女は私のようだった。でも、気付いてくれる人は気付いてくれるし、私の言葉を重要だと思ってくれる人は思ってくれる。そんな人が何人か思い浮かぶだけでも幸せだ。

一人は夫。夫は私をユニークだと言う。夫とは本の話も音楽の話もできる。一番話の合う友人でもある。夫に出会えて、夫に見つけてもらえて幸せだ。

何人かの友人。最近は会えてないし連絡もあんまり取ってないけど、確かにわかり合えたときがあったし、きっと次会ったときも言葉が通じると思える。そんな友人がいるって幸せだ。

何人かの職場の人。イライラさせられるおばちゃんが大半だけど、何人かの人とは趣味が合う。マニアックな話ができる人もいる。職場でそんな人と出会えるなんて幸せだ。

本を読むこと、考えることはなぜ必要か?答えはきっとたくさんある。

今回感じたのは、自分が幸せだと気付く為なんじゃないか、ということ。本を読んでこんなことを思ったのは初めて。

でも、本を読むことができる、じっくり考えることができる、感想を伝えたいと思う相手がいる、相手にもきっと伝わると思える、わかってくれると思える。今まで気付かなかったけど、この環境ってめちゃめちゃ恵まれてるな。

時代を風刺したSF小説を読んで、こんな幸せな気持ちになるとは思わなかったな。読書って不思議。だから面白い。